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用語集

ア行
アイソトープ(同位元素)
「陽子(ようし)」の数は同じでも、「中性子(ちゅうせいし)」の数が違う原子(げんし)。同位体(どういたい)ともいいます。
アルファ(α)線
放射線の1つ。アルファ線は、空気中では5cm程度、紙1枚で止まります。霧箱でアルファ線の飛んだあとをみることができます。
安定同位体
アイソトープの中で、放射線を出さない原子。例えば、水素の仲間には、水素、重水素、三重水素(トリチウム)があり、放射線を出さない水素、重水素は、安定同位体です。
宇宙線
太陽など地球以外から飛んでくる放射線を宇宙線といいます。
エックス(X)線
放射線の1つ。1895年にレントゲン博士が発見しました。クルックス管にかける電圧を上げていくとX線が発生します。
エックス(X)線撮影
「レントゲン撮影」ともいいます。放射線にはものを通り抜ける性質がありますが、X線は骨や血液で止まりやすく、また脂肪(しぼう)はその厚さによって通り抜ける量が変わってきます。その性質を利用すると、私たちの体の中でおきていること(骨折、ひまん、出血など)を検査することができます。
カ行
外部被ばく
放射線を体の外から受けること。
壊変(崩壊)
放射性物質は、放射線を出すことによって安定した原子になろうとします。この放射線を出しながら原子が変化していくことを「壊変(かいへん)」といいます。
花こう岩
ウランやトリウムなどの放射性物質(ほうしゃせいぶっしつ)を比較的多く含む石で、御影石ともいいます。西日本などの花こう岩が多いところでは、自然に浴びる放射線の量が多くなっています。
カリウム(K)40
自然にあるカリウムの一種で、放射性物質です。カリウムの中のわずか0.012%がカリウム40です。カリウムは、植物の三大栄養素の一つで、私たち人間にとっても必要な栄養素です。私たちは野菜などを食べることでこの放射性のカリウム40を含むカリウムを取り入れ、身体で常に一定の量を保っています。
ガンマ(γ)線
放射線の一つで、電波や目に見える光よりもエネルギーが強い電磁波のことです。エックス線と同じで、鉛や鉄などの厚い板でさえぎることができます。
ガイガー・ミュラーカウンタ(GM計数管)
放射線を測る装置の一つで、GMとはガイガー・ミュラーのことです。放射線が通り道に電気の粒を作る力(電離作用)を利用して、放射線の量を測ります。測定した数値は、「cpm」(「カウント・パー・ミニット:1分間に放射線を数えた回数」の略)という単位で表されます。
【人物】キュリー夫妻(ピエール・キュリー、マリー・キュリー)
フランスのキュリー夫人は、夫と一緒に石の中に入っているウランを調べる実験をしました。その実験で、世界で初めて二つの放射性物質を取り出すことに成功しました。一つは夫人の生まれたポーランドからポロニウムという名前を付けました。もう一つは放射線を意味するラテン語の「ラジウス」からラジウムという名前を付けました。これらの研究から、キュリー夫妻はノーベル物理学賞を受賞しました。
霧箱
放射線が通った跡を見るための装置。放射線が通った場所に沿って、飛行機雲のような白い筋が観察できます。
グレイ(Gy)
放射線が物質や人体に当たると、そのエネルギーが物質に与えられます。グレイという単位は、物質が、その重さあたりで放射線から受け取ったエネルギーの量を表します。1キログラムの物質が放射線によって1ジュールのエネルギーを受け取ると、「1グレイ」となります。
蛍光作用
紫外線や放射線が物質に当たると、その物質が光を放つことがあります。この光を「蛍光(けいこう)」といい、この蛍光を出す物質を「蛍光物質(けいこうぶっしつ)」といいます。エックス線は、蛍光作用を利用して発見されました。
原子
私たちの世界にあるすべてのものは、原子(げんし)というとても小さな粒の集まりでできています。原子は「原子核(げんしかく)」と原子核のまわりをまわっている「電子」からなり、原子の大きさは約1億分の1cmです。
原子核
「原子核(げんしかく)」は、「原子(げんし)」の中心にあり、「陽子(ようし)」と「中性子(ちゅうせいし)」でできています。原子核の大きさは、原子の大きさの約1万分の1です。
原子力発電
ウランやプルトニウムが、核分裂(かくぶんれつ)すると、大きな熱が発生します。原子力発電では、その発生した大きな熱を使って発電します。
元素
物質を作る原子の種類のことを元素といいます。原子核の中にある陽子の数(原子番号)が元素の種類を決めます。今までに118種類の元素が見つかっています。
国際放射線防護委員会(ICRP)
ICRPとは、放射線による人体への影響を調べて、放射線障害を防止するための基準を作っている組織です。この組織の勧告は、世界中で尊重されています。放射線の影響には、「確定的影響」と「確率的影響」という2つの種類があります。ICRPはこの考えをふまえ、線量限度や規制のあり方等についての勧告を作っています。
固形がん
何らかの原因でできた異常な細胞が増え続け、体の中につくったかたまりを腫瘍(しゅよう)といいます。「固形がん」とは、臓器や組織などで腫瘍を作るがんの総称です。胃がん、肺がん、乳がん、大腸がんなどが含まれます。
個人線量計
人が放射線を受けた量を測る測定器のことです。その人がどのくらい放射線にさらされたかを知ることができます。
サ行
シーベルト(Sv)
放射線が人体に与える影響を表す単位で、放射線の量を安全に管理するために使われます。ミリシーベルトやマイクロシーベルトという単位で表されます。
自然放射線
宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線や、大気や地面、食べ物などから出る放射線は、人類が受けてきたもので、それを「自然放射線」と呼びます。私たちが暮らす日本では、自然放射線は1年間で平均2.1ミリシーベルトになります。
質量数
原子核の中にある、陽子と中性子の合計の数を「質量数」(しつりょうすう)といいます。陽子数(=原子番号)だけでなく質量数でも原子核を区別するときには「核種」と呼ばれます。例えば、同じ炭素でも、炭素12は陽子6個と中性子6個でできていて、炭素14は陽子6個と中性子8個でできています。このように、質量数が異なると、異なる核種となります。
cpm
放射線測定器で1分間に数えられた放射線の数を表す単位がcpmです。カウント・パー・ミニットの略です。
遮へい
放射線をさえぎることを「遮へい(しゃへい)」といいます。放射線は種類や強さによってさえぎるために必要な材料や厚さが変わります。適切な材料と厚さでさえぎることで、放射線の影響を防ぐことができます。
除染
放射性物質による人、物、環境等の汚染を除去することを言います。具体的には洗浄、削除等の方法があります。
人工放射線
レントゲン博士がエックス線を発見してから、医療や工業、農業などで色々な用途に使うために人工的に放射線を作るようになりました。これらを「自然放射線」に対して「人工放射線」といいます。病気を診断するために使うエックス線や、がん治療に使う重い粒子のビームなども「人工放射線」です。
シンチレーション式サーベイメータ
放射線の蛍光作用を利用して、空気中の放射線の量を測る測定器。放射線の人体への影響を調べるために用います。測定するときの単位は、μSv/h(マイクロシーベルト・パー・アワー)などが使われます。
セシウム
原子番号55の元素がセシウムです。セシウムにはいくつか種類がありますが、自然界にあるセシウム133は放射線を出しません。東京電力福島第一原子力発電所の事故で放出された物質には、放射線を出すセシウム134やセシウム137などが含まれていました。
タ行
炭素(C)14
自然界にある炭素のほとんどは、放射線を出さない種類の炭素(炭素12)ですが、ごくわずかに放射線を出す炭素14もあります。炭素14は、5730年で半分に減るという性質があります。
この炭素14の性質を使って、考古学では発掘された物の年代を調べることができます。(詳しくは「年代測定」のところを見てください。)
中性子(線)
原子核を構成する中性子が単独で原子核の外に出たものであり、核分裂などで発生し、電気を帯びていません。そのため物質を通り抜けやすいですが、水素の原子核とぶつかるとエネルギーを失います。水は水素を含んでいるので、効果的に中性子をさえぎることができます。
DNA(デオキシリボ核酸)
DNAは、生物の遺伝情報を伝えるもので、細胞の核にあります。放射線は、DNAを傷つけてしまうことがあります。でも、細胞にはDNAを治す能力があるため、DNAが傷ついても細胞は修復(しゅうふく)します。細胞ではこの傷つきと修復が繰り返されています。でも、治せない場合もあります。そうなると、間違った情報が伝わってしまって、その細胞は死んでしまいます。でも、ごくまれに死なずに残った細胞が変異を繰り返すことで、がん細胞になってしまうことがあります。
電子
原子をつくっている粒の一つで、マイナスの電気をもっています。原子核内の陽子と同じ個数の電子が原子核の周りを回っています。これを「軌道電子(きどうでんし)」といいます。
電磁波
電気と磁気が一緒になってできる波のことを「電磁波(でんじは)」といいます。電気を帯びたものが動いたり、電流の流れ方などが変わったりすると、電磁波ができます。ガンマ線やX線、紫外線、見える光、赤外線、マイクロ波などの電波も全て電磁波です。
電離
放射線は物質に当たると、物質の「電子」を弾き飛ばすことができます。これを放射線の「電離作用」といいます。
この電離作用を使った測定器には、GM計数管や電離箱、半導体検出器などがあります。
同位体(同位元素)
同じ元素でも中性子の数が違うものを「同位体」といいます。同じ元素なので原子番号(陽子の数)は同じですが、重さが違います。例えば炭素のうち、炭素12と炭素14が同位体です。
同位体は「アイソトープ」ともいいます。
透過
放射線には物を通り抜ける力があり、これを「透過」(とうか)といいます。病院で撮影するエックス線写真は、この「透過」の性質を利用して体の中の様子を見ることができます。また、放射線が物質を通った後の量を測ることで、水や鉄板、紙の厚さなども測ることができます。
トロン
ラドンという元素の中に、ラドン220という種類の気体があります。これを「トロン」と呼びます。この気体は、α線を出しながら、55.6秒ごとに半分に減っていきます。
ナ行
年代測定
昔のものを調べるために、考古学では「放射性炭素年代測定法」という方法を使っています。炭素14は、自然の放射性物質で半減期は5730年です。植物が大気中から炭素を取り込む時に、炭素14も同時に取り込みます。その植物を食べた動物も同じように炭素14を取り込みます。でも、植物や動物が死んでしまうと、新しい炭素14を取り込まないので、徐々に炭素14の量が減っていきます。ですから、土器や骨などの古いものに含まれる炭素14を調べると、何千年前のものかを知ることができます。
内部被ばく
放射線を体の中から受けること。
ハ行
ベータ(β)線
放射線の一種で、原子核から飛び出すとても速い電子をベータ線といいます。アルミの薄い板で遮へいできます。
ポロニウム(Po)
ポロニウムは原子番号84の元素です。キュリー夫妻が世界で初めてウラン鉱石から取り出した二つの放射性物質のうちの一つです。夫人の生まれたポーランドからポロニウムと名づけられました。
半減期
ある物質が半分になるまでにかかる時間を「半減期」といいます。例えば、100個あった物質が半減期が経つと50個に、さらに次の半減期が経つと25個になります。放射性物質にも半減期がありますが、その種類によって時間が違います。半減期の短いものは数秒だったりするし、長いものは100億年を超えるものもあります。この半減期は「物理学的半減期」と呼ばれます。また、体内に取り込まれた放射性物質が体の外へ排出され半分になるまでの時間を「生物学的半減期」といいます。そして、物理学的半減期と生物学的半減期の両方を考慮したものを「実効半減期」といいます。例えば、ヨウ素131の実効半減期は約7.3日であり、セシウム137は約99日です。
被ばく
放射線を体に受けることを「被ばく」といいます。体の外から被ばくする「外部被ばく」と、体の中から被ばくする「内部被ばく」があります。被ばくによる健康への影響は、シーベルトという単位で表されます。1ミリシーベルトの「外部被ばく」と1ミリシーベルトの「内部被ばく」では、健康への影響は同じと見なせます。
品種改良
新しい品種を作る技術を「品種改良」といいます。放射線を当てて、わざと突然変異を起こさせることで、品種改良することができます。この方法により新品種の育成が大きく進展しました。
風評被害
根拠のない噂や事実に基づかない情報が広まることにより、経済的な被害や悪影響を受けることを「風評被害」といいます。
ベクレル(Bq)
放射性物質が放射線を出す能力(放射能の強さ)を表す単位を「ベクレル」といいます。1ベクレルとは、1秒間に1つの原子核が壊変(崩壊)する量を表します。例えば、370ベクレルの放射性カリウムは、1秒間に370個の原子核が壊変して放射線を出します。
【人物】ベクレル(アンリ・ベクレル)
フランスのアンリ・ベクレルは1896年、放射線を発見しました。偶然に写真乾板の上に十字架型の文鎮とウラン化合物の結晶をのせて、机の引き出しにしまっておきました。これを現像してみると、乾板に十字架が写っていたことから、ウランが放射線を出していることに気付きました。
放射光
高いエネルギーの電子が磁場によってその進行方向を曲げられると、強力な電磁波(光)を発生します。この電磁波を「放射光」と呼びます。放射光に含まれるエックス(X)線や紫外線といった光を利用して色々な実験を行うことができることから、ナノテクノロジーをはじめとした材料科学、さらには生命科学や医学などといった幅広い研究分野に利用されています。
放射性物質
放射線を出す物質のことを「放射性物質」(ほうしゃせいぶっしつ)といいます。植物や岩石、大気など様々なものに含まれています。
放射線
物質を電離できる能力を持った粒子や電磁波を「放射線」といいます。そのままでは目で見ることはできませんが、私たちの回りのどこにでも存在し、様々な分野で利用されています。
放射能
放射性物質が放射線を出す能力を「放射能」といいます。単位はBq(ベクレル)で表します。
マ行
モニタリング
放射線や放射能の量を調べることを「モニタリング」といいます。原子力発電所などの施設の周りでは、放射性物質が環境に影響を与えていないか、定期的に調べています。施設周辺にはモニタリングポストやモニタリングステーションと呼ばれる装置が設置されていて、そこで測定を行っています。
ヤ行
陽子
「陽子(ようし)」は、中性子とともに原子核を構成する粒子の一つです。陽子の数は原子番号と同じで、陽子はプラスの電荷をもっています。
ヨウ素(I)
原子番号53の元素がヨウ素です。ヨウ素には、安定したヨウ素127のほかに、放射線を出すヨウ素131やヨウ素133などがあります。
福島第一原子力発電所の事故で放出された物質には、ヨウ素131などの放射性物質が含まれていました。
ラ行
【人物】ラザフォード(アーネスト・ラザフォード)
ラザフォードは放射線の種類を発見しました。ウランやトリウムから出る放射線について磁石を利用して実験をしたところ、磁石の力で一方に曲がる放射線ともう一方に曲がる放射線があることを発見し、それぞれ「アルファ(α)線」と「ベータ(β)線」と名付けました。その後、新たに発見された放射線を「ガンマ(γ)線」と名付けました。
ラジウム(Ra)
ラジウムは、原子番号88の元素です。キュリー夫妻が世界で初めてウランから取り出した二つの放射性元素のうちの一つです。放射線のラテン語であるラジウスから「ラジウム」と名付けました。
ラドン(Rn)
ラドンは原子番号86の元素で、天然のものはアルファ(α)線を出す放射性元素です。世界中の大地(地表の近くの土や岩石)などから出ているので、空気にも含まれています。また、石やコンクリートの壁からも出ており、石造りの家が多いヨーロッパでは、寒冷なことから窓を閉めることが多く、日本に比べ室内のラドンの濃度が高くなっているといわれています。
【人物】レントゲン(ヴェルヘルム・コンラート・レントゲン)
ドイツのレントゲン博士は、ガラス管内で高電圧を発生させる実験をしている時、黒い紙で管を覆っていても、蛍光板が光ることを発見しました。彼はガラス管の中から見えない光が出ていると考え、この光をエックス(X)線と名付けました。この発見により、博士はノーベル物理学賞を受賞しました。

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