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教員向け研修会

放射線教育授業実践事例30:福島県富岡町立富岡第一小学校・富岡第二小学校三春校(2016.09)

 

 福島第一原子力発電所の事故で、全町民が避難した福島県富岡町が避難先の三春町に設けた富岡第一小学校・富岡第二小学校三春校は2016年9月13日、放射線教育の実践協力校として、福島県環境創造センター(三春町)で研究会を開き、6年生の学級活動「放射線の性質を知ろう」を公開した。

 

富岡第一小学校・富岡第二小学校三春校

 原子力発電所事故のあった2011年3月から半年後の9月に、避難先の三春町にある旧民間事業所の施設を活用して開設。富岡第一小学校、富岡第二小学校と富岡幼稚園が1階を使用(児童数は第一小学校7名、第二小学校8名)、富岡第一中学校と富岡第二中学校が2階を使用し運営している。小中学校が連携をとるために、運動会などの行事を合同で実施、校長室には小中の4校長が机を並べ、一緒に執務をしている。

 

 ■ふるさと創造学と放射線教育 ~誇りを持てる子に~

(右から順に)富岡第一小学校校長 岩崎秀一氏、富岡第二小学校校長 渡邉かほる氏、富岡第一中学校校長 阿部洋己氏、富岡第二中学校校長 村上順一氏

 

 小中学校の4人の校長先生は共通した考えとして、小学校では、学校の基本理念や重点目標への取組みとして、「ふるさと創造学」と「放射線教育」を取り入れ、中学校まで継続して学習しているという。岩崎校長は「生徒たちは今でも自宅に戻れず、富岡の記憶がない生徒も多いため、学習を通して故郷に誇りを持てる子に育って欲しい。また放射線については基礎的な知識を身につけ、自ら考え、判断し、行動できる力を身につけて欲しい」と力説した。今回の公開授業はその趣旨に沿うよう、学校から近くにこの7月にオープンした福島県環境創造センターと協力して構成されたという。

 

■霧箱や測定器で放射線の種類や性質を体感する

指導:飯村歩美氏(富岡第二小学校教諭)

     佐々木清氏(福島県環境創造センター 教育ディレクター)


<実験1>

 放射線の観察として霧箱を使用。

取り扱いについての注意事項を説明した上で、1人1人に用意された霧箱を作成し、

α線の飛跡を確認。その状況をスケッチし、感想を書いた。

 

<実験2>

 児童2人が組になって、湯の花を放射線源に、紙、アルミニウム、鉛を使用して放射線の遮へいについて実験。計測された放射線量から予め測定したバックグラウンドの放射線量を引くことにより、紙では少し、アルミニウムと鉛ではβ線を多く遮ることができることを確認した。

 

 

<実験3>

 同じく2人の組で、放射線源から0~20cmまで5cmずつ離して放射線量を測定。

距離が離れれば離れるほど放射線量が少なくなることを確認した。

 

 実験後、飯村教諭が「普段は見えない放射線が霧箱を使うことにより見えること」、「放射線を遮ると線量が少なくなること」、「放射線から離れると線量が少なくなること」と、実験で分かったことをまとめた。その上で、「放射線から身を守るためにはどうしたらよいか」の問いに、男子グループは「測って高かったら離れる」、女子グループは「遠くに早く逃げる」とそれぞれ意見を発表した。

 

 最後に児童は、映像を360°の広がりで映し出す「環境創造シアター」に行き、放射線の性質を分かりやすく紹介する『放射線の話』と、福島の四季折々の自然と長年受け継いできた伝統の祭りと文化を紹介した『福島ルネッサンス』の映像を見て学習した。

 

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