7月28日(土)に練馬区立関中学校において、練馬区立総合教育センター主催「中学校科学教室」の中の1コマとして「放射線を学ぼう」という授業が行われた。講師は全国中学校理科教育研究会会長でもある練馬区立開進第一中学校校長の高畠勇二氏が行った。
まず、生徒の「放射線」に対するイメージを自由にワークシートに書いてもらった。その際、「レバ刺しの販売が禁止されているが、放射線を使って食べられるようになるかもしれない」と最近のニュースの話題にふれた。
次に「エア・カウンターS」を使って理科室内の放射線量の測定を行った。
その結果、各生徒の値は概ね、約0.05μS v/h だった。教室の中にも放射線があることに驚いている生徒もいた。
次に文部科学省が発行した放射線副読本のコピーを使い、①自然界の放射線 ②放射線の特徴や単位 ③身の回りの被ばく等を中心に解説を行い、その他の部分は概要のみを話し、詳細は持ち帰って読んでもらうことにした。ポイントとして、「放射線は電磁波の仲間」「放射線は遮蔽できる」「シーベルトという単位」「チェリノブイリに行く時、飛行機に乗ったので講師も被ばくした」「福島第一原子力発電所事故による放射性物質はもう飛んでいない」等を生徒に説明を行った。
放射線に関する基礎知識を学んだ後、霧箱観察を行った。簡易霧箱セットを1人に1セット配布し、講師が作り方を説明して各自で準備を行い、準備ができたところから、ドライアイスを配った。観察まで時間がかかったようだが、放射線の飛跡を見ることができた。途中で中型の霧箱を準備し、数名の生徒にはそこで飛跡を見てもらった。生徒たちからは「すごい!」「きれい!」という驚きの声が多かった。
霧箱観察のあと、バックグランドが約0.05μS v/hだったことをふまえ、練馬区のホームページからのプリント使い、数値の意味を考える授業を行った。
?練馬区の放射線量測定における「対応基準値」の考え方
http://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/koho/oshirase/hoshasen/taioukijyunnti.html
?宮城県女川町の災害廃棄物受入情報(光が丘清掃工場での受入開始)
http://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/gomi/oshirase/saigaihaikibutu.html
練馬区としての「対応基準値」は、0.24μS v / hで、このうち自然放射線量の数値は、0.05μS v/hである。ICRP勧告の年間1ミリシーベルトから、毎時の値を算出し、自然放射線量を足して、練馬区としての「対応基準値」が出来ていることを説明した。また光が丘清掃工場の空間放射線量の測定結果を見て、「対応基準値」よりもはるかに低いことを生徒に示した。
屋外の放射線量を測定する前に、放射線量が高くなると考えられる場所はどんなところか、練馬区のホームページを参考にした。
ア:雨水の集まるところ及びその出口 | イ:雨水・泥・土がたまりやすいところ |
ウ:植物及びその根元 | エ:錆びた鉄構造物・トタン屋根 |
4つの場所が記載してあり、これらを参考にして、「エア・カウンターS」と「放射線量計測シート」を持って、グループ毎に屋外で放射線量の測定を行った。なお対象物に計測器を接触させないことや5回測って平均値をとること等、事前に講師が測定方法の説明を行った。
各グループの代表が黒板に張られた大きな地図に計測した場所と数値を記入した。測定した結果から屋外の放射線の強さにどのような傾向がみられるか考察する予定だったが、時間の関係でできなかった。なお計測結果とワークシートは回収し、講師のほうで分析し、後日参加者の学校に戻すことになった。
最後に、講師が視察してきた「チェリノブイリ」のスライド写真を映し、事故の概要や現在どのような状況なのか、福島の事故との違い等を生徒に説明した。そして「放射線をイメージや感覚で怖がるのではなく、数値等科学的根拠に基づき判断しないといけない。風評被害のせいで瓦礫の処理が進まず、東北の復興も遅れている。」「冷静に考えて行動してほしい」という言葉で授業を締めくくった。
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