川崎市立宮内中学校(学校長:小山 淳一氏)ではこのほど、「『探究心を育て実感を伴った理解をもたらす理科指導』〜言語活動を豊かにする工夫〜」と題した研究主題の元、川崎市教育委員会中学校理科研究推進校としての研究発表会を開催した。その中で、3年生は「(7)科学技術と人間」のエネルギー資源の単元にて放射線の基本的な性質について「らでぃ」の資料や電気事業連合会のDVDから知り、霧箱や「はかるくん」を使った実験を通して放射線を可視化し、ディベートを通して放射線とその利用について考えを深める「放射線の利用」の学習を2時間連続の授業で行った。
授業を行った吉田崇教諭はICT機器とホワイトボードなどを活用した授業を展開。本時間の導入では、実験用の放射線源(ユークセン石)を用いた霧箱の実験で放射線を可視化し、観察を展開。生徒は霧箱の中をさまざまな角度から覗き込み、ライトの位置を変えるなどしながら放射線が描く白い飛跡を興味深く観察し、各班で3分間に確認できた放射線の飛跡の合計数を発表した。
続いて放射線測定器「はかるくん」と放射線特性実験セットを用いて放射線が教室の中にもわずかながら存在することや、放射線源からの距離とともに少なくなること、さえぎるものがあれば防げることを実験から得た数値で確認した。それぞれの班の計測結果は前に表示されたディズプレイに書き込み、班毎の実験結果を比較し、放射線の性質についてまとめ理解を深めた。
続いての2時間目はクラスのグループを分け、学んだことを活用し、その有用性と危険性についてディベート方式の討論を展開し、自己の考えを深めた。有用性に目を向けたグループは放射線の医療分野での利用や、工業分野での利用など日常生活の中ですでに有効利用されている点を強調した主張をホワイトボードにまとめて展開、一方、危険性に目を向けたグループは主に福島第一原子力発電所の事故によるセシウムの問題や、社会科で学習したというチェルノブイリ原子力発電所の事故を例に放射線が及ぼす人体への影響を軸にホワイトボードにまとめ、その主張を展開した。
吉田教諭は本授業のねらいとして、「生徒は、放射線はガンの原因どの不安要素は知っているものの、有効利用の面はレントゲン写真くらいしか知らない場合が多い。放射線の基本に触れ、報道で流れる情報をしっかり見つめ、自分で判断し、選択できる力を養いたい」と話す。
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