鹿屋市立第一鹿屋中学校(学校長:中川和喜代氏)ではこのほど、3年生理科「7科学技術と人間」のエネルギー資源の単元にて放射線の基本的な性質について実験をまじえて学ぶ授業を行った。
授業を行った原口栄一教諭は数年前から放射線の学習に関する授業研究を進め、同学年の1年生・2年生の段階から、理科の単元で発展的な学習として、放射線を関連付けて授業を行ったほか、道徳の授業でも「放射線」を題材にした授業を行うなど、多様な場面で「放射線」を授業の中で取り扱った経験を持つ。
原口教諭は今回の放射線の学習を単元の発展的学習として位置づけた。授業の導入では、1年時の火成岩の学習と2年時の原子の学習、そして2年時の道徳で学習した放射線の特徴を復習するところから始まった。原口教諭が理科ノートの空欄に当てはまる放射線に関する要点を生徒の反応を見ながら問いかけ、生徒達は学習時の記憶をたどりながら、発言し、理科ノートに記載していく。この一連の確認の中で原口教諭はこの放射線が人体へ影響を及ぼす説明の際、原口教諭は手作りのα線、β線、γ線、中性子線の模型とDNAの模型を用いて放射線がどのように、人体に影響するのかを解説した。
<原子力発電所の模型を用いた福島県第一原子力発電所の事故の説明>
一通りの振り返りを終えた後、当授業のテーマは放射線の性質を調べることと、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故によって起こった放射線の汚染の広がりについて知ることを目標として伝えた。
最初に取り組んだ実験は福島第一原子力発電所で起きた事故によって放出された放射性物質と放射線量の分布図に表示された数値を見ながら、各班に配られたバナナやナッツ、船底塗料などの試料(特性実験セット)から出ている放射線を「はかるくん」を使って計測し、試料から出ている放射線量は分布図の地域とどこが一番近いか、また、試料の中で一番放射線量が高いものがどれであるかを調べ各班に放射線を出す試料が配られた。
<福島県の放射性物質の分布図、自分たちが計測した放射線量を比較>
続いて、アウトドア用のランタンのマントルを放射線源に用いた、霧箱の実験で放射線の観察を行った。生徒は霧箱の中をさまざまな角度から覗き込み、ライトの位置を変えるなどしながら「見えた!」「見えない!」と声を上げ、放射線が描く白い飛跡を興味深く観察した。
そして、2つの実験を終えて、時間に余裕がある班は理科室の中にある気圧計や電流計などを放射線試料に近づけ、数値的な変化が無いかを観察し、結果として専用の機械(=放射線測定器)でなければ放射線は測定できないことも体感した。
<放射線測定器「はかるくん」の他に気圧計・静電気チェッカーなどでも放射線による変化が確認できないかを観察>
各班がそれぞれ得た実験結果をホワイトボードに記入したものを黒板に掲示し、各班の実験結果を比較した。
原口教諭は授業のまとめとして、実験で確認した放射線の特徴を福島県の人々が今、生活している状況にあてはめ、屋根に近いところの放射線量が高いことと、床に近いところの放射線量が高い理由を説明した。
そして、鹿児島県にある九州電力川内原子力発電所が同様の事故が起こった場合、鹿児島県でも同じような状況になることを説明した。
授業をすすめるうえで原口教諭は世間の情報・状況として確定していないこと(事実関係や国としての方針など)は基本的に賛成論も否定論も両方取り扱うことでバランスに配慮していると話す。また、授業中に使用したα線、β線、γ線、中性子線の模型やDNAの模型、チェルノブイリ原子力発電所の模型など、映像資料として出回っているコンピュータグラフィックやアニメーションでは伝わりにくいものがあるという観点から、手作りの教材を利用している。
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