目で見ることのできない放射線を可視化できる霧箱の実験。放射線に関する実験の中では非常に人気が高い霧箱実験は、霧箱の中に「過飽和層」と呼ばれる霧ができやすい環境をいかにつくるかが重要となっています。霧箱に魅せられた多くの専門家や教職員は、これまで過飽和層をより厚く、精度よく観察するために様々なタイプの霧箱を開発してきました。
霧箱の開発とともに放射線を出すもの(放射性物質)もずっと研究課題となっていました。宇宙が誕生したのは約138億年前。その後の超新星爆発も重なって、宇宙には様々な元素や放射性物質ができました。地球も同じように誕生以来放射性物質が常に存在し、今でも地面の中や空気中に含まれています。地球の中心にあるマントルの熱の半分は、ウラン系列やトリウム系列といった放射性物質から出る崩壊熱によるものと言われています。特にトリウム系列であるラジウム224が壊変したときに放出されるアルファ線は霧箱で可視化しやすいため、自然界に存在する霧箱の線源として利用されています。
今回は、比較的に入手しやすい自然界に存在する放射性物質や放射線とともに、工業製品に付着する放射性物質や工業製品から放出される放射線についてご紹介いたします。
※霧箱の原理や工作については以下のページをご参照ください。
○キッズページ:実験で学ぶ「自由研究してみよう!~霧箱実験~」
■風船によるラドンの採集
風船が「ペンシルバルーン」と呼ばれる細長い風船を使用してください。風船は膨らませてから、その口を結びます。ウールまたはキッチン(ティッシュ)ペーパーなどで静電気をおこします。あえて静電気を帯びにくく加工された風船もありますので、風船を選ぶときにはご注意ください。 静電気によって空気中のホコリとともにウラン系列やトリウム系列から壊変した金属原子(放射性物質)を集めます。 |
■掃除機によるラドンの採集
風船と同様にホコリとともにウラン系列やトリウム系列から壊変した金属原子(放射性物質)を集める方法として、掃除機を利用します。 |
■ラドン温泉水
ラドン温泉の温泉水には、トリウム系列やウラン系列の放射性物質が含まれています。そこから出てくるラドン220(トロンともいう)を利用します。 |
過飽和層が厚い状態をつくることができれば、自然放射線を見ることもできます。 |
花崗岩には、トリウム系列やウラン系列の放射性物質が他の種類の岩石よりも多く含まれています。 |
放射性鉱石には、花崗岩と同じくトリウム系列やウラン系列の放射性物質が他の種類の岩石よりも多く含まれています。 |
■クルックス管
レントゲン博士は、クルックス管の研究からX線を発見しました。 中学校や高校で使用されるクルックス管に高電圧の電流を流すと、エックス線が発生します。 現在は、エックス線が発生しない熱陰極管や定電圧の冷陰極管も増えてきました。 |
■セラミックボール
セラミックボールでもいろんな種類があります。放射線がほとんど出ていないものもありますので霧箱の線源として利用しようとする場合はご注意ください。「セラミックボール+放射線」といったようにアンド検索することをおすすめします。 |
■トリウムタングステン
アーク溶接という金属と金属をつなぐ時に使用する溶接棒になります。 溶接棒の種類はいろいろあって、トリウムが微量に含まれているものもあります。 |
■ガスマントル(ランタンの芯)
キャンプなどで利用するランタンの芯。 オーストリアの科学者カール・ヴェルスバッハ(1858-1929)は、トリウムを利用して白色の明るい光を得ることに成功し、ガスマントルはヨーロッパ中に広がったそうです。 アスベストが含まれたガスマントルがあったことから製作方法が見直され、その結果、現在入手できるガスマントルのほとんどは、トリウムが含まれなくなりました。 |
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