未分類

ホーム > 未分類

平成27年度放射線教育フォーラム第2回勉強会(NPO法人放射線教育フォーラム主催)%e6%9c%aa%e5%88%86%e9%a1%9e

平成27年度放射線教育フォーラム第2回勉強会「これからの放射線授業実践をみすえて」に参加して(2016年2月28日開催)

今回、標記研究会第2回勉強会に参加した。

 

1)研究会の理事長の長谷川圀彦氏より、創設の1994年から、22年間の成果を踏まえて、本年年末に福島で国際シンポジウムを開催するという意向が述べられた。以下のような講演を会場いっぱいの聴衆が聞き、総合討論に参加した。時宜を得た内容で盛り上がったシンポジウムであった。以下に講演内容を記す。

 

2)講演1 STEM教育改革の観点と放射線教育  静岡大学教授 熊野善介氏

 現在欧米特に米国で進んでいる科学教育の教育改革は、昨年12月に、STEM教育法が策定されたことからも、今後、日本にも大きな影響を及ぼすことになろう。この教育改革の理論的な基盤が2013年に策定され、NGSS(次世代科学スタンダード)が連邦レベルで策定された。最も大切なSTEM教育概念として、「エネルギー」や「システム」が取り上げられ、21世紀型能力とPBL(問題基盤型学習とプロジェクト型学習の両者)とが重要視されている。これらは、我が国の次期学習指導要領の論点整理にも出てきている内容と合致しており、放射線教育もこの文脈での学習を展開するテーマとして最適な学習内容であると力強く述べられた。

(注: S:Science, T:Technology, E:Engineering, M:Mathematics)

 

3)トピックス 日本発113番元素  理研仁科加速器研究センター 柴田誠一氏

 2015年12月31日、国際純正・応用化学連合(IUPAC)より理化学研究所超重元素研究グループの森田浩介氏(九大大学院教授)宛に、彼らの研究グループが発見した「113番元素」を新元素であると認定したとの通知が年末のNHKの紅白歌合戦の間のニュースの合間にあった。この事情を柴田氏から、生々しくお聞きできた。元素の周期表に、初めて日本発の元素が加わることになる。

 

4)講演 2 福島原発事故から5年 ― 放射線問題の現状と課題 ― 元日本原子力研究開発機構 河田東海夫氏

 事故からまもなく5年を迎えようとしている。各自治体が進める重点調査地区の除染も大詰めを迎えつつあるが、依然1mSvの呪縛は根強く残っている。ヨーロッパで、7mSv以上に1600万人以上が住んでいる。また、国が直轄除染を行っている地域でも、昨年9月に全住民避難の自治体としては初めての帰還が楢葉町で始まったが、被ばくへの不安ほか様々な問題を抱え、実際の帰還は全人口の5%にとどまっている。こうした現状について放射線問題を中心に振り返って話された。

 

5)講演3 中学校理科教育における放射線モデル授業計画の作成について エネルギー環境理科教育推進研究所 高畠勇二氏・日本原燃 宮川俊晴氏

 まず、これまで8年間(2007年から2014年)の中学生に対する放射線の認識調査について述べられた。青森、福島両県、東京都の3.11の前後の比較でも、あまり認識に改善が見られない分野も多いという報告であった。5項目の大きな比較でも青森県の9000名の中学生では、放射線のネガテイブなイメージが強くこの傾向は東京も変わらずALL JAPANで同じではないだろうか。自然界の放射線についての認識は増加しており、教育の効果は認められるとまとめられた。

 新教科書(中学校理科)については、内容全体のボリュームが格段に増えたことによって、先生方への負担は大きくなると予想される。そういった中で、放射線の授業は中学3年生の3学期に取り組むことが一般的となる一方で、「やれる時にやろう!」といった視点で中学1年から機会をつくっていくことも一つとの提案があった。「?光?火山と地震?電流?化学変化?動物の体のつくりと働き」など大中小項目授業の具体例が10名近い先生方の報告として、簡潔にまとめられていた。中学校1年生で火成岩からの自然放射線の測定を行い、2年生では電流の真空放電実験から放射線の発生を理解する授業など、中学3年間で分散して実施する放射線授業モデルが提案された。中学校の理科教育3年間の体系に、具体的なテーマをはめ込んで指導した先生の実践を踏まえた授業案を伺った。学習指導要領の「触れる」から、「扱う」への行動で、さらに深化させられるのではないかとの期待も伺った。

? ?さらに、一般社団法人エネルギー・環境理科教育推進研究所での平成26年度文部科学省委託授業の「科学的な理解を進める放射線教育セミナー」の取り組みが話された。全中理を基盤にした先生方の、中学生に対する出前授業、リーダー講習会は、現場を知るものの教育の重要性を語るものである。今後も環境整備が必要であろう。

 

6)総合討論

 参加中学校の先生方からの研究会の講演へのご感想、ご質問を伺い、最後に現場の先生方から、日頃放射線授業への取り組みについても伺えた。「放射線を、エネルギー資源として教える際の弊害はあるのか?」、「理科や科学技術として教えるべきではないか?」という今後の議論が必要な意見もあった。霧箱のつくり方 放射線源入手困難ではないか?に対して、会場内の参加者からもっと簡単な手法も紹介された。

 STEM教育の中で、Eに相当する教育を早期に取り組むべきではないかという意見があった。長い教育制度システムの中で、中学校の技術(情報教育との併存ですべては使えないが)の時間が、Eの唯一の実施環境では、E教育は進めにくい。工学部の存在感も最近下がっているということを聞いている。Eが、米国で重視されていることは、その先駆けかもしれない。

 

Copyright © 2013 公益財団法人日本科学技術振興財団