2015年11月25日(水)、福島県郡山市立富田中学校では、2年生の総合的な学習の時間を使って「福島第一原子力発電所の廃炉や復興に向けた取り組みについての現状と今後の見通しについて知り、将来にわたって自分たちができることは何かを考えることで、将来に夢や希望をもつことができるようにする」ことをねらいにした授業を公開した。
富田中学校
人口数約33万の郡山市の富田町に、生徒数597名で1986年に創立した富田中学校は、創立30周年を迎え、現在は24学級655名の生徒数を誇る(2015年11月現在)。JR郡山駅から北西に4km、福島第一原子力発電所からは約60km離れている。
放射線教育も切り替えの時期になってきている
震災時は郡山市内の別の中学校にいたという佐藤氏は、「当時は、よく分からない中で直接的な放射線に対する恐怖や、いかに子供たちを避難させるか、守るかといったことに重点を置いていた」と言う。しかし、約5年が経過し、「今は保護者や地域の方々も含めて、放射線への恐怖はだんだんと表面には出て来なくなってきているように思う」とのこと。それは、「例えば、線量計・フィルムバッチを付ける率が下がってきていることなどからも言える」として、「放射線教育も放射線の科学的なこと以外にも、原発事故や放射線や社会的被害の道筋が風化していかないようにするための取組が重要になってきていると思います」と語る。
福島第一原子力発電所の廃炉に向けた今を知り未来を考える
授業は、まず、放射線の種類や霧箱実験、そして放射線の遮へい、健康への影響などについて、昨年の授業の復習から始めた。そして、教員たちが福島第一原子力発電所やその周辺自治体を見学した模様を写真を見せながら説明。
見学用のバスに乗り、無人の商店街などの事故当時のままの風景や汚染土置き場、そして福島第一原発構内、汚染水貯蔵タンク群など。さらに福島第二原発の炉心真下などの見学写真をプロジェクターで見てから、今日のテーマ「震災からの復興について考えよう」ということで、まずは外部講師として招いた東京電力・復興本社の青木氏を紹介。
青木氏は、福島第一原発1〜4号機の現状、汚染水の増加を少なくするための凍土壁や汚染水を浄化してからの海洋への放水など、廃炉に向けた取り組みを説明。
次に、やはり東電から、廃炉作業現場で実際に働いている作業員の方がマスクに防護服を着て登場。防護服やマスクを説明をしながら、夏場の現場での苦労などについて紹介。また、生徒の何人かに実際に防護服を試着させた。さらに、もう一人の担当者から、廃炉に向けた工程や現場作業者の半数は福島県出身者であることなど、作業者の廃炉に向けた思いなどを語った。
生徒にそれまでの感想を書かせると、「地元の方たちの熱い思いが伝わりました」などの感想が述べられた。
次いで、日立GEニュークリアエナジーの技術者が登場し、廃炉の現場で活躍する遠隔ロボットを実際に動かして見せながら説明。さらに、どのような勉強をするとこうしたロボットなどの開発に携わることができるか説明し、生徒たちの将来に資するよう、また復興に欠かせない先端技術への興味・関心を持てるように語った。
こうした外部講師の説明を踏まえ、教諭は「福島の復興に向けて君たちができること」ということで、①廃炉について ②除染土の管理・処理 ③風評被害 についてグループ討議させ、発表させた。「食べ物の検査を確実に行い、安全なことを積極的にアピールする」「廃炉について募金する」などの感想が述べられた。
最後に、教諭が「廃炉まで、まだ40年もかかることから、これから社会に出て行く君たちは、今後ロボット開発や原発に関わっていくことあるからも知れないから、今からいろいろと考えることが大事だ」とまとめ、今日の授業の感想を書かせ、「作業現場には福島県の人が多いことや、復興に向けて前進していることが分かったし、いろいろ知らないことが知ることができてよかった」という生徒の発表で終了させた。
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