2015年10月29日(木)、福島県いわき市立小名浜第一小学校では、6年生の学級活動(45分)を使って「放射線から身を守るためにできること」をテーマに公開授業を実施した。
小名浜第一小学校の概要
沿革をみると明治5年(1872年)に遡り、明治6年を学校創立としている歴史ある小学校で、福島県浜通り南部にある「いわき市」の最南端に位置する「小名浜」地域の小高い山の中腹に建つ。全14学級、児童数は約292人(取材時)。JR常磐線「いわき」から2つ前の「泉」駅からタクシーで約15分。福島第一原子力発電所からは約50kmとのこと。
学校内の様々な箇所の放射線量を公表することで理解が促進
●小名浜第一小学校 田村尚 校長
「福島第一原発事故直後は、マスコミ報道などもあり、児童や保護者の皆さんには不安が広がり、校庭での活動を自粛するなど、対応に苦慮した。しかし、学校内の様々な箇所で放射線量を測り、それを公表することを続けてきたことによって、徐々に理解されるようになり、今では不安視されることはほとんどなくなってきた」という。また、「放射線の授業を積み重ねることによって、理解が深まってきていると自信をもっている」とのこと。
そして、「今日の公開授業のように、距離をおいたり、遮へいすることによって受ける放射線量を減らすことができるという原則的なことを教えたり、データで示したりしていきたい。そして、多量の放射線を受けると人体に様々な影響を及ぼすことがあるが、上手に利用していくこともできるということを学ばせていきたい」と今後の放射線教育の抱負で締めくくった。
放射線から身を守るための3原則を遮へい実験から学ぶ
●石塚美千留 教諭
まず、前日に校長先生と「放射線」について学習した「放射線とはどんなものか」(性質、身近な利用例、危険性など)を児童たちに聞きながら確認した。その後、放射線とはどんなものかを、分かりやすくまとめた3分程度のビデオを鑑賞し、再度、復習。そして、放射線から身を守るために3つのこと(放射線を出すものに近づかない、放射線を出すものを覆う、放射線を出すものを払う)を思い出させた。そこで、これらのことを確かめるため、実際に実験をすることにした。
実験からは、放射線医学総合研究所の職員4名が入り、
①自然の放射線の量をはかる②遮へい板をおくと放射線の量はどのように変わるか③線源からの距離が変わると放射線の量はどのように変わるか、など実験内容について説明。放射線と放射能についての違いなどを解説した後、実験に移った。
実験は、4人一組の6グループに分かれ、それぞれに用意されたGM管式サーベイメータの使用方法を習ったうえで、まず、自然の放射線量を、教室の真ん中や窓際、廊下などで計測。次に、机上で、アクリル、アルミニウム、鉄、鉛の遮へい板を使って、線源から出て来る放射線をそれぞれの遮へい板を測定器と線源の間におくことによって、どう変化するかを調べた。
さらに、測定器を線源から離すことによって、線量はどう変化するか調べ、グラフにまとめた。そして、上記①〜③についての結果を児童たちに聞いて、実験のまとめとした。
最後に、教諭が授業のまとめとして、放射線から身を守るためには、「遮へいする」「距離を離す」「時間を短くする」ことが大切であることを確認して授業を終了した。
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