放射線教育授業実践事例18:福島県郡山市立富田中学校
2014年11月27日、郡山市立富田中学校では、1年生の放射線教育として4回目にあたる「放射線と健康について考えよう〜放射線マップ、食品にふくまれる放射性物質測定の実験をとおして〜」(85分)を公開した。授業は園部至哉教諭が行った。
いろいろな食材の放射能を測ってみる
6名からなる班、それぞれが持ち寄った食材5種と学校で栽培したさつまいもなどの食材、ゆず、柿、みかん、野生しいたけ、里芋、にんじん、さつまいもの放射能を測るところから授業は開始。測定は、福島大学から招いた専門家に託し、その間、生徒たちの家庭での除染状況などを確認し、放射線から身を守る方法について、外部被ばくと内部被ばくの観点から確認した。
〈授業の様子〉
「ラディ」を使って校内を測定
次に、ナイロンの袋を被せ汚染しないようにした放射線測定器「ラディ」を使い、校内のさまざまな地点での空間線量を測るため、班ごとに選定された地点で測定をした。なお、生徒たちの測定の指導は、除染情報プラザの方々の協力を得て行われた。生徒たちは、結果を放射線学習のワークシートに記入してクラスに戻り、班ごとに結果を発表。その結果を、教諭が黒板にまとめると、学校東の田んぼが他の地点と比べて4倍ほど高いことが分かった。そこで、田んぼの線量がなぜ高いのか考えさせ、除染をしていないためであることを理解させた。
〈放射線量の測定〉
食材の放射能の測定結果は
授業の冒頭に測定を開始した食材の測定結果、ゆず、柿、みかん、里芋、にんじん、さつまいもがND(測定限界値以下)で、野生のしいたけが5739Bq/kgが貼りだされると、生徒たちは驚きの声をあげていた。教諭は、食品中の放射性セシウムの基準値について説明するとともに、「測ると安心」ということから測定することの大切さを感じ取らせた。 そして、福島大学の専門家に、食品中の放射能についての解説をしてもらい、日常の食品にも自然放射能であるカリウム40が全てのものに含まれていること、その線量の大きさは食品によって違うことなどを学ばせた。
〈グループ討議〉
風評被害をどう払しょくして行くか
次に、福島県産の農産物が福島第一原発事故による風評被害で、売り上げが落ちている状況を福島大学の専門家が説明し、これを受け、この状況を払しょくするためにはどうすればよいのか、グループ討議させ、班ごとに発表させた。「成分表示部分に放射能測定結果も入れたらよい」「ビニールハウスの中で栽培すればよい」「有名人によるCMでPRしたらよい」などの考えが出され、まとめとして「一人ひとりが食品についての情報をよく確認する」ことが大切だと結論付けた。
〈専門家の先生による解説〉
食の安全、そして放射線と健康
引き続き、食の安全や福島県の農産物の状況について、除染情報プラザの専門家に、陰膳調査結果やお米の全袋検査状況について説明をしてもらい、「安全」と言われた場合、それは科学で証明された客観的事実だということ、活性酸素とがんの関係、がんを防ぐ食材などについの説明をした。
そして、「ラディ」を約30台提供した計測機器会社の堀場製作所の担当者による学校内の放射線マップの提示のあとに、教諭が「知らないから不安なる、知れば怖くない」「みんな、放射線について詳しくなっているから郡山を出ても安全で暮らしていたと言えるように」というまとめで授業を終了した。
〈授業のまとめ〉
事後研究会
授業終了後開かれた研究会では、見学に参加した他校の教諭から、「授業をする際、どこに協力を求めていけばよいか」「放射線の情報はどのように入手しているか」など、実際に授業をしていく上で必要になる情報を求めての質問が多く出された。 そして、福島県教育庁の阿部氏の指導助言を経て閉会となった。
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