大学教員がゲストティーチャーとなり、中学生に放射線を指導する出前授業が、1月19日に港区立御成門中学校で行われた。
都内の4大学で組織する「学際生命科学東京コンソーシアム」(お茶の水女子大学、学習院大学、北里大学、東京医科歯科大学)と港区教育委員会が連携し、6校の区立中学校で実施した。御成門中では3年生全員が参加し、放射線の基礎を学ぶ講義と実験を行った。
授業の前半は、北里大学講師の坂本光氏が、放射線の種類や単位、自然放射線の存在、医療や産業での利用など、放射線に関する基礎的な知識を解説した。
放射線による人体への影響については、しくみも含めて詳しく紹介。放射線を受けると細胞内の水の一部が活性酸素となり、遺伝子や細胞を傷つける。「鉄がさびるのと同じように、細胞もさびてしまう」と説明した。
一方で、「人体には傷ついた細胞を元に戻す力がある。体内の活性酸素も、たんぱく質やビタミンなどによって消去することができる」と細胞の修復能力にも言及。まとめでは、「放射線をよく知らないまま、恐がったり恐がらなかったりすることが一番危険。まずは正しく理解することが大切」と呼びかけた。
後半は、お茶の水女子大学非常勤講師の森田由子氏の指導で、放射線の計測と観察の実験に取り組んだ。まずは環境放射線モニタで教室内のガンマ線を測定。複数回測った平均値をワークシートに記入し、身近な場所にも放射線が存在していることを実感した。
霧箱での観察実験では、人体に影響のない放射線源(マントル)を入れた装置と空の装置を並べて、放射線の出方を比較した。「細い飛行機雲のようなものが、ひゅっと現れます」という森田氏の説明を聞いた生徒たちは、ペンライトを手に装置を注目。放射線の飛跡が現れると、「すごい」「見えた」と声を上げていた。
「今日の実験のように、測ることも見ることもできるものだと知ったうえで、放射線と向き合ってほしい」と森田氏。生徒たちからは、「いままで放射線にはあまり目を向けていなかったが、今後はニュースなども注意して見ていきたい」といった感想が出ていた。
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